大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和57年(わ)5808号 判決

本店所在地

大阪市生野区林寺二丁目二五番二九号

電研工業株式会社

(右代表者代表取締役中村俊幸)

本籍

大阪市港区田中元町三丁目一八九番地の二

住居

同市生野区林寺二丁目二五番二九号

会社役員

中村俊幸

昭和二五年四月九日生

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官鞍元健伸出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

一、被告人電研工業株式会社を罰金二六〇〇万円に、被告人中村俊幸を懲役一年六月に、各処する。

一、被告人中村俊幸に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人電研工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、大阪市生野区林寺二丁目二五番二九号に本店を置き、電気通信機及び電気機器の製造、販売等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人中村俊幸は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人中村は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上げ及び棚卸しの一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和五四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が六三三一万二五八〇円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年二月二九日、大阪市生野区勝山北五丁目二二番一四号所在の所轄生野税務署において、同税務署長に対し、その所得金額がなく納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二四二三万六九〇〇円を免れ、

第二、昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が九七六六万五一四二円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五六年二月二八日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額がなく納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三七七八万一〇〇〇円を免れ

第三、昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際総所得金額が六二一二万四七六七円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五七年三月一日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額がなく納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二四四八万二八〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人中村の公判廷における供述

一、被告同人の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の同被告人に対する質問てん末書一六通

一、収税官吏の池端勝哉、三木真澄、照崎忠雄(二通)、乗富宏次(二通)、山口佳裕、亀岡朋子、品川登美男(二通)、内藤幸子(四通)、中村美代子に対する各質問てん末書

一、被告人(二通)、内藤幸子、品川登美男(四通)、野末拓、大西一弘、福永正彦、今中徹、小林達哉、平本弘各作成の「確認書」と題する書面

一、収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高確認書三通

一、収税官吏作成の現金現在高確認書

一、収税官吏作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、収税官吏作成の査察官調査書一七通

一、被告会社作成の法人税確定申告書謄本三通(証拠等関係カード検察官請求分番号10 11 12)

一、収税官吏作成の脱税計算書三通(前記番号1 2 90)

一、大阪法務局登記官作成の法人登記簿謄本

一、押収してある元帳一一冊(昭和五八年押第二六九号の一ないし五)、金銭出納帳五冊(同押号の六)

(法令の適用)

被告人中村俊幸の判示第一、第二の各所為は、いずれも行為時においては、昭和五六年第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、判示第三の所為は、改正後の法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人中村俊幸を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人中村俊幸の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示第一、第二の各所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に、判示第三の所為につき右昭和五六年法律第五四号による改正後の法人税法一六四条一項により改正後の法人税法一五九条一項の罰金刑に、各処すべきところ、情状により法人税法一五九条二項を適用し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金二六〇〇万円に処する。

(予備的訴因を認めた理由)

法人税逋脱犯は、故意犯であるから偽りその他不正な行為により法人税を免れたことについての故意を必要とするが、各事業年度毎に単純一罪が成立するものである。従って、各事業年度の所得を構成する個々の勘定科目毎に個別的具体的な認識を必要とするものでないことは明らかであり、当期増減金額を犯則金額とその他に区分することは正当でない。被告会社の昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における所得額の計算については、予備的訴因が正当であり、犯則、非犯則の区分を前提とする本位的訴因は、採用しない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金山薫)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三) 修正損益計算書

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例